紀州の民間療法記記(原文8)

紀州の民間療法記記(原文)

  1. 婦女の陰
  2. ニラ
  3. ツゲ
  4. ハコネシダ
  5. シーボルトミミズ
  6. キジの爪
  7. ウサギの手、モグラの手
  8. 初なすび、スベリヒユ
  9. コンニャク
  10. モグラの手 追記
  11. 菖蒲
  12. キンカン
  13. 琴の一の緒、白いアヒル、黒いチャボ
  14. サルカキイバラのキクイムシ、蜂蜜
  15. コバンザメの吸盤
  16. 蒔かずの稲の米
  17. ニワトリの頭
  18. イチジクの枝葉
  19. テリハノイバラの花
  20. 尾長糞蛆の黒焼き
  21. 病をきる
  22. 梅酢

8 初なすび、スベリヒユ

 

 初茄子を一つ、小児の臥処(ふしど)の上に釣りおくと、その夏汗疱(あせぼ)を生ぜぬという。馬歯莧(すべりひゆ)を煠(ゆ)でると、茎より粘汁出でて色赤く蚯蚓のごときを、好んで食う人あり。塩でこの草の葉を揉み、汗瘡に付けると神効あり。見るうちに治するが、劇烈な物で、時として患者が気絶する由。また田辺でいうは、馬歯莧は至って精の強いものゆえ、煠でて味噌あえにして食えばイキンド(喘息の方言)を治すること妙なり。

back next


「紀州の民間療法記記」は『南方熊楠全集 第2巻』(平凡社)に所収。

Copyright © Mikumano Net. All Rights Reserved.