紀州俗伝(現代語訳4-6)

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紀州俗伝(現代語訳)

  • 3-1 師走狐
  • 3-2 狐の仕返し
  • 3-3 ホタル来い
  • 3-4 雀と燕
  • 3-5 今生まれた子限り
  • 3-6 カイコの舎利
  • 3-7 月の8日
  • 3-8 欲深いシャレ
  • 3-9 2つの鐘
  • 3-10 比丘尼剥
  • 4-1 師走狐の鳴き声
  • 4-2 雨乞いの池
  • 4-3 フクロウと天気
  • 4-4 ホタル来い
  • 4-5 鰹鳥
  • 4-6 宵の蜘蛛、朝の蜘蛛
  • 4-7 他人の足の裏
  • 4-8 狐と硫黄
  • 4-9 早口言葉
  • 4-10 狼を山の神と
  • 4-11 女に化けるアナグマ
  • 4-12 葉巻煙草
  • 4-13 一文蛤
  • 4-14 高野山の井戸
  • 4-15 蝸牛の囃し詞
  • 4-16 壁の腰張り
  • 4-17 ムカデとマムシ
  • 4-18 足のしびれを直す方法
  • 4-19 熊野詣の手鞠唄異伝2
  • 4-20 人買い
  • 4-21 ホオズキ
  • 4-22 玄猪
  • 4-23 茶釜の蓋
  • 4-24 コオロギの鳴き声
  • 4-25 トンボ捕り
  • 4-26 そばまきとんぼ
  • 4-27 木偶茶屋
  • 4-28 七つ七里
  • 4-29 油虫

  • 4-6 宵の蜘蛛、朝の蜘蛛

     

    蜘蛛
    Adult Male Jumping spider (Pelegrina pervaga) / Thomas Shahan

     田辺の老人が伝える。宵の蜘蛛は親に似ていても殺せ、朝の蜘蛛は鬼に似ていても殺すな。これは夜の蜘蛛を不吉とするので、「吾が背子が来べき宵なり」と、蜘蛛を夜見て喜んだ古風と反対だ。

    (中略)

    しかしながら田辺の俗伝で、朝の蜘蛛を愛し、夜の蜘蛛を嫌うのは、蜘蛛は夜中跋扈活動し朝になって潜匿静居する者なので家内の治安上から割り出したのだろう。

    広土行記には、蜘蛛が軍中およびに八家において集まると、喜ばしいことがある、とあり、これに反し、古欧州では、蜘蛛の網が軍旗や神像に着くことを不吉とした。

    仏国では蜘蛛が走りまた糸繰るのを見ると金儲けすると言い、あるいは朝ならば金儲け、夕方なら吉報を得ると言う。しかし一説には、朝の蜘蛛は少しの立腹、日中のは少しの儲け、夕の蜘蛛は少しの有望を知らすのじゃと言う。

    サルグが評して、蜘蛛が富の兆しならば、貧民がいちばん富まなければならないと嘲ったのは面白い。(1845年第5版、コラン・ド・ブランチー『妖怪事彙』39頁)

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    「紀州俗伝」は『南方随筆』(沖積舎) に所収。

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