本邦に於ける動物崇拝(現代語訳4)

本邦に於ける動物崇拝(現代語訳)

  • はじめに
  • 海豚
  • 鶺鴒
  • 野槌
  • 海亀

  • 鼬
    Siberian Weasel / coniferconifer

     ○鼬(イタチ)、『和漢三才図会』巻三十九に、鼬が群れで鳴けば不吉とするのは、今もそう信じる人がいる。「或夜中、有焔気高昇如立柱、呼為火柱、其消倒処必有火災、蓋群鼬為妖也」とこのような迷信が今もあるのか否かは知らない。梢やこれに似ているのは、デンマークなどで建築中材木から火が出て飛ぶのはその家が火災に罹る兆しであると伝えるが、鼬の所為であるとは言わない(H. F. Feibery, 'Ghosty Light' Folk-Lore,vol. vi. p.288 Seqq. 1896.)。

    『源平盛衰記』巻十三に鼬が踊り鳴いて程なく、後白河法皇が鳥羽殿より還御したことがある。また『義経記』か『曽我物語』に、泰山府君の法を修して、成就の兆しに鼬が現われる話があったと記憶するので、別に崇拝されたと聞かないが、古来邦人の迷信上、鼬はなかなか一癖ある獣と知られている。

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    「紀州俗伝」は『南方随筆』(沖積舎) に所収。

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