本邦に於ける動物崇拝(現代語訳3)

本邦に於ける動物崇拝(現代語訳)

  • はじめに
  • 海豚
  • 鶺鴒
  • 野槌
  • 海亀

  • 熊
    Black Bear .........1 / Alan Vernon.

     ○熊、『古事記』に神武天皇が熊野村にて大熊にお遇いになったことを載せ、伴嵩溪の説に、栂尾山所蔵の『熊野縁起』に、同帝31年辛卯、高倉下尊が紀南にて体長1丈余りで金の光を放っている熊を見、また霊夢を感じ、宝剣を得たとあるとのこと。熊野の名はこれに始まるという。

    今も紀州に予のように熊を名とする者が多いのは、古、熊をトーテムとした民族があったからであろうか。アイヌ人が熊を崇めて神とすることと考え合わせるべきだ。『北越雪譜』初編巻上に「山家の人の話に、熊を2、3匹殺すと、あるいは年を経た熊を1匹殺しても、その山は必ず荒れることとなる。山家の人はこれを熊荒という。ゆえに山村の農夫は求めて熊を捕ることがない」といい、『想山著聞集』巻四に、熊を殺す者はその報いで常に貧乏するとのことを記しているのも、古、熊を崇めた痕跡であろう。

      熊野の説話:神武東征、ヤタガラスの導き

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    「紀州俗伝」は『南方随筆』(沖積舎) に所収。

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