樟柳神とは何ぞ(現代語訳5)

樟柳神:樟柳神とは何ぞ(現代語訳1)

1 樟柳神
2 方術に植物の根を用いる例
3 マンドラゴラ、英名でマンドレイク
4 曼陀羅花
5 商陸
6 マンドラゴラの子を孕ます効果

5 マンドレイクの子を孕ます効果

 

マンドラゴラが催眠また麻酔性に富める由は前に述べた。 これも商陸にはありと聞かぬ。しかし、『本草』に商陸 に赤白の二種あり、白きもの薬に入る、赤きものを内用すればはなはだあり、鬼神を見るとか使うとか、人を殺す などいいおり、一概に赤いものを排斥したから、右記の薬性があっても知り及ばなんだはずだ。ただ一つ、北宋の かげぼし が、人心昏塞し、多く忘れ臥すを喜むに、商陸花を百日間陰乾し、搗き末して、日暮れに方寸匕を水で服し、臥し て欲するところのことを思念すれば、すなわち眠中に醒悟すとあるは、阿片等の催眠剤に、時にかようの働きあるよ り推して、商陸花も多少催眠の効ある証かと思われる。 アラブ人はマンドラゴラを悪魔の蠟燭とよび、あるいは十 ぞ 一世紀の英国古文書には、この物夜分蠟燭ほど光るといい、西暦一世紀のユダヤ人は、マンドラゴラの色のごとく、 夕に強く輝くといった。これと均しく、上に引いた『五雑俎』に、商陸を静夜梟肉もて祭れば鬼火集まる、と出づ。 一 八七六年レヴィーニカラグワで見出だし、電気商陸と名づけた木は、八歩隔った磁針を狂わし、虫鳥も近づか 棟 ぬほどの発電力ありというから、貧乏にならずとも、芽から火を出すだろうが、まずはそんな発電植物がありとは受 け取りかねる。古ユダヤ人は、マンドラゴラ根もて邪鬼が付いた患者に触るればたちまち退散す、と信じた。『神農 柳神とは何ぞ

本草』に、商陸は鬼精物を殺す、と述ぶ。 マンドラゴラよく叫ぶことは上に出した。『五雑俎』に、商陸一名夜呼、

 

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「樟柳神とは何ぞ」は『南方熊楠全集 第4巻 雑誌論考 2』所収。

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