妻木直良

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  • 妻木直良(つまき じきりょう)

    妻木直良(1873〜1934)。日蓮宗大学講師、龍谷大学教授。
    中国仏教史、仏教学、真宗学や道教の研究者。『真宗全書』編纂主任。



    妻木直良

    南方熊楠の手紙:浄愛と不浄愛,粘菌の生態,幻像,その他(現代語訳11)
    その冷雲師の孫に、陸軍大学教授であった日本第一の道教研究者妻木直良師がある。22年前、例の小生が炭部屋で盛夏に鏡検最中のところへ来て、いろいろと話す。ちょうど小生は粘菌(※変形菌※)を鏡検していたため、それを示して、『涅槃経』に、この隠滅する時かの陰続いて生ず、灯生じて暗滅し、灯滅して闇生ずるがごとし、とある。

    南方熊楠の手紙:浄愛と不浄愛,粘菌の生態,幻像,その他(現代語訳12)
    貴僧なども、人間と地獄とのことを手近くわかりやすく説こうとするならば、『涅槃経』の文句を粘菌の成る成らぬで説かれよ。人々はこれを聞いて粘菌と人間は別の物ということを忘れて、一事は万事、世間はなーるほどそうしたものと手早く理解し、速やかに悟るだろうと、熊楠は四畳半ほどの炭小屋でこのように説き、妻木師はよほど感心したと見え、受け売りの備えに熊楠の説法の暗誦につとめて、ろくろく挨拶もせずに立ち去ったことがあった。

    覚後禅』に、賽崑崙が未央生に説いたなかに、真快を悦味する婦女は言語途絶し、手足冷却し気息も聞こえず、まったく死人と同じになる、このような女としてこそ即身成仏であるという意味のことを説くところがあったと記憶する。妻木師が無言で立ち去ったのもまたまたこのようであった。

    南方熊楠の手紙:浄愛と不浄愛,粘菌の生態,幻像,その他(現代語訳13)
    さて22年を経て当日小生が山田氏宅に着いたのを、家人が御坊町の山田の従兄へ電話で知らす。ちょうどそのとき、妻木師が御坊町へ来ていて、本願寺別院で説法中で山田の従兄も聴きに行き、山田妻の妹(上述煎餅を小生の娘にくれた者、嫁いで材木屋の主婦である。37歳だが、25,6に見える。美人王子の申し子はみなこのようである)も行っていた。

    ところが妙なことには、妻木師がちょうど生死の一大事に関し、件の『涅槃経』の文句をもじって講じ終えて、先年南方氏を田辺に訪ねたとき、鏡下に粘菌を示してかくかくの話があった、見る人の眼から見ればこのような微物も妙法の実相を示すと受け売りを弁舌爽やかにやらかし、一同大喜び、感涙にむせんだところに、山田の従兄が臆面もなく立ち上がり、妻木師に申して、その南方氏はただ今ここから5分で行くことができる北塩屋浦に来ていて、予の従弟片に一泊すると言うと、妻木師は大いに喜び、即刻ひとまず場を閉じ、皆様また夕の7時からご来訪くださいということで、弟子の坊主2人と自動車を走らせ午後3時過ぎに山田家へ来て、いろいろ話をして午後6時過ぎ、また説法で一儲けと立ち去られた。

    南方熊楠の随筆:十二支考 蛇に関する民俗と伝説(その28)
    道教の事歴にもっとも精通せる妻木直良氏に聞き合せても、しかと答えられず、鵠も鵝も足にみずかきあり概して言わば古ローマ古支那を通じて蛇の足は水鳥の足に似居ると信じたので、張衡その父が蟒蛇に呑まれたのをかくし転じて、大蛇に乗りて崖頂に登り、それから昇天したその大蛇が、足を遺したと触れ散らしたのであるまいか。


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