1908年11月10日:南方熊楠日記(現代語訳)

1908年11月10日

◇11月10日[火] 晴 夜寒

明け方に宇治田虎之助(故陸軍大佐)を夢に見る。朝早く馬吉は荷物点検のため栗栖川に出立。予は宿にて昨日採取した菌類を描く。点灯した後、灯りが暗いので止める。寝床で『源氏物語忍草(げんじものがたりしのぶくさ)』を桐壺から朝顔まで読む。


メモ

宇治田虎之助は熊楠の子どもの頃からの友人。

…宇治田虎之助氏は、予六、七歳のころよりの友で、その名の示すごとく寅年生れで、予より一歳の年長だった。小さい米屋の倅から身を起こして陸軍大佐までなったが、奉天の戦いに一戸将軍の副官として奮戦中、大砲のために胴より上を粉砕され、壮烈なる戦死を遂げた。
(「上京日記」『南方熊楠全集 第10巻』)

日露戦争に出征し、明治38年(1905年)3月1日に戦死。享年41歳。

『源氏物語忍草』は江戸前期の俳人・歌学者である北村湖春が著した『源氏物語』の梗概書(ダイジェスト本)。

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1908年の日記は『南方熊楠日記 (3)』八坂書房 に所収

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