紀州俗伝(現代語訳11-1)

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紀州俗伝(現代語訳)

  • 11-1 雷のへそ
  • 12-1 一昨日来い
  • 12-2 雀
  • 12-3 閏年
  • 12-5 木偶の首
  • 12-6 畑泥棒への罰
  • 13-1 一極めの言葉
  • 13-1附記 法師様
  • 13-2 地蔵菩薩と錫杖

  • 11-1 雷のへそ

     

     雷のへそ(郷研2巻58頁参照)  紀州西牟婁郡西ノ谷村の小野崎稲荷祠は、数年前合祀させられてしまった。ここに20年ばかり前まで「雷のへそ」という物が時々土中より出た。陶器質でその形も大きさも鰡魚(ぼら)の心臓(俗に臼と言う物)ほどである。子供らがこれを集めて娯楽とした。

    あるいは、昔ここで短い足の付いた土鍋を作った。その足ばかりを作り置き、鍋に付けないまま事業が廃止になって棄て埋められたのだろう、という。解説はその通りとして、なぜこれを「雷のへそ」といったのかわからない。この辺りで鰹の心臓をへそという。それに似ているからの名かと愚考する。

    また俗話に、雷が鳴りに出て行く留守を頼まれ、引出し一具を大切に片付けてあるのを見つけ、雷が帰ったので一見を望むと、一番上の引出しには人の眼、次は鼻、次は口と、へそを入れた引出しまで見せてくれたので、もう1つ残ったのを示せと望むと、へその下は見せられない、と。

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    「紀州俗伝」は『南方随筆』(沖積舎) に所収。

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