紀州俗伝(現代語訳)

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南方熊楠の随筆(現代語訳)

  • 紀州俗伝
  • 山の神に就いて
  • 山神オコゼ魚を好むと云う事
  • ひだる神
  • 河童に就いて
  • 熊野の天狗談に就いて
  • 紀州の民間療法記
  • 本邦に於ける動物崇拝
  • 紀州俗伝(現代語訳)インデックス



    ちょっと解説

    熊楠は柳田国男宛て書簡(大正3年5月10日)に「紀州俗伝」のことを次のように述べています。

    小生の「紀州俗伝」は、民俗学材料とはどんなものどもということを手近く知らせんために書き出でしなり。伝説とか古話とかには、うそ多く新出来も多く、また、わけ知らぬものがたちまち出逢うと俚談らしくて実は古い戯曲などに語りしを伝えて出拠を忘れたるもの多し。それよりも土地に行なわるる諺語や、洒落詞、舌ならし(『喜遊笑覧』にいうところの早口)、また土地のものが左までに思わぬ些々たる風習、片言等に反って有益なる材料多し。とにかく近ごろ諸国諸方より「紀州俗伝」風の蒐集が出で来たれるは、郷土研究のためにも賀すべし。一国の植物群を精査せんには、いかなありふれたことも、仙道に至っては微かに存し、東京辺には全くなき等、民俗の分布を知るには、かかる些事些事の蒐集がもっとも必要なり。縁起経や神誌や伝説ばかり集むるは面白いが、そは比較文学に似たことで、民俗学唯一の事業にあらざるなり。小生は民俗学が社会学の一部なるごとく、説話学は単に民俗学の一部に過ぎず、と主張す。


    「紀州俗伝」は『南方随筆』(沖積舎) に所収。

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